日本酒といえば、何を使って飲む?
日本酒といえば、何を用いて飲むイメージがあるだろうか。
まず私はお猪口をイメージする。百貨店へ行けば、切子など見た目が美しいものや、銀や錫など材質にこだわったものなど、様々な種類のお猪口がある。バレンタインや父の日用のギフトセットとして、お猪口付きの日本酒なんてのもよく見かけたものだ。
そのグラスをめがけて一升瓶から酒を次ぎ、グラスから溢れた酒はさらに升の縁ぎりぎりまでなみなみと注がれ……という、毎度分かってはいるけれど、ドキドキしながら見てしまうそれである。
では、グラスという想像をする人はいるだろうか。数年前からワイングラスで飲む日本酒というキャッチフレーズは聞かないことはないが、少なくとも私にはまだそのイメージは定着していない。
しかしながら、ワイングラスの名門ブランドが作った、日本酒用のグラスや、日本酒メーカーが作った専用グラスなども巷で見かける機会が増えたようだ。いったいなぜそのようなグラスが作られるようになったのか、考察していきたい。
リ―デル 大吟醸グラス
さて、肝心のグラス本体についてであるが、形状はやや縦長のボウル形になっている。大吟醸と銘打たれているが、吟醸系の酒はやはりフルーティな香りが特徴的なものが多い。このような酒を、より香りたたせ、爽やかな喉越しを楽しめるようにするため、このような形状になっているという。もともとワイングラスにも、特徴的な味を際立たせたり、香りを引きだたせたりと、様々な目的のもと、様々な形状のものが存在している。そう思うと、グラスメーカーがこのようなグラスを発売するというのも頷ける話だ。
ちょこっと話~日本酒の流行について~
ここで突然の閑話に入るが、近年の日本酒市場だと、どんなものが流行ってるの?と知り合いの酒造の人間何人かに聞いてみると、口を揃えて言うのが、吟醸酒は日本というより海外で好まれているということだ。
確かに、ワインなど香り高い酒を飲んでいれば、自然と手が伸びるのは吟醸酒であったとしても不思議ではない。それこそワイングラスで日本酒を飲むことに何の抵抗もないだろう。
では、日本での流行りは?と聞くと、吟醸より純米酒などの米の旨味を感じられるようなものや、スパークリング清酒が伸びているという。昭和時代、本醸造酒が主力だった頃から随分流行も変わったものだが、日本での日本酒市場の縮小具合から新しい飲み方の提案をするようになり、特にスパークリング清酒を見かける機会が増えた。
スパークリング清酒?何それ美味しいのと発売当初は懐疑的な目も向けてしまったものだが、なるほど確かにこれなら日本酒が苦手な人でも飲みやすい、甘い発泡のお酒だった。特に日本酒を飲まない若い女性向けに、綺麗な見目のボトルの飲みやすいお酒をという試みには、当時は驚いたものだ。
ただし、スパークリングワインのフルーティさというよりは、やはり米の甘みなので、スパークリングワインみたいですよ!という勧め方をしてしまうと抵抗があり、ほんのりやさしい甘酒風味のスパークリングを想像してくださいという方が、個人的にはしっくりくる。
最近では辛口のスパークリング清酒も増えており、瓶の形状の傾向も変わった。有名どころの、澪・すゞ音など、シュッとした華奢目のボトルが多かったが、見た目がスパークリングワインのボトルそのものというのも明らかに増えた。
まだ浸透には時間がかかりそうだが、「今日はスパークリング飲みたいね!ワインにする?日本酒にする?」なんて日も、いつかは来るのかもしれない。
八海山 Sakemust(サケマスト)
あの八海山も、日本酒専用グラスを発売しているのは、ご存じだろうか。
また面白い形状を考えるなあと感心したのだが、リ―デルのようにグラス下部がボウル型になっているのは同じだがグラス中央部に大きなくびれがある。
こんなくびれがあって飲みにくいんじゃないの?何が変わるの?と思わず質問したくなるが、もちろんそこには理由があった。
くびれがあることで、酒を飲むのには大きく傾けないと口には入らないのだが、くびれの部分で香りを溜めていたところから、グラスを大きく傾けて一気に口に含むことで、普段よりもひときわ際立った酒の風味を味わうことができるのである。
ちなみにこの八海山sakemustのグラスのお値段は、リ―デルの大吟醸グラスより1000円程度お値段が張るようだ。個人的には1000円の差ならば、八海山のグラスを購入してみたいと思った。
つまり日本酒グラスとは
日本酒グラスで飲むことの大きな利点としては、香り高さが際立つということは間違いないようだ。今までグラスで飲む文化がなかっただけに、驚いてしまう人がいるのも無理はないが、日本酒メーカー直々にグラスを作り、それを使って新しい日本酒の風味を楽しんでほしいと勧めるほど、時代は変わってきているのかもしれない。
この記事を書いていて感じたのは、日本酒×グラスに限らず、使う酒器によって同じ酒でも全く違う印象をうける可能性が高いということ。
今後試したいことの一つとしよう。